DECAGON

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ヴァイオリン作りの独り言






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1-10   11-20   21-30   31-40   41-50 



41 適正と職人

42 黄金比は何処

43 ARTIST(芸術家)とARTIGIANO(職人)

44 ハンドメイドは柔軟

45 老マエストロの楽器は、精度を超える

46 弓は弓修理人へ

47 すべては正十角形より

48 キリカキよ、さようなら

49 内枠が先か、外形が先か

50 ストラディヴァリの怒りに触れるのか













41  適正と職人

 徒弟制度の時代において、職人になる為の適正は、親方のような上の人によって評価されるものであったと思う。
 しかし、今は、本人の自己申告が重んじられるようになって来てしまった。一時間も独りで作業机の前に座る事が出来ない製作者が、「ヴァイオリン作りの仕事が好きなんです」と言っている事を耳にする。昔ならば徒弟の段階で親方に首を切られているのであろうが、現代は、本人が好きであると思っていれば良い。
 門戸を誰にも開くと言うイタリアの学校による職人教育が、この事を加速させたような気がする。
小、中学校の工作の時間が好きでもなく、物を作る事に興味がなかった人間が、「ヴァイオリンを作るのが好きなんです」といっているのは不思議である。
私は、物を作るのが好きで、たまたまヴァイオリン作りをしているだけであると思っている。
ストラディヴァリは、教会関係の木彫の仕事や、楽器ケース作りと言う物作りの徒弟の後に、かなりの年齢から楽器製作を始めている。
最近の半完成品を使って、手工品と、うそぶく職人が増えたのも、物作りの好きでないヴァイオリン作りが増えた所為であると思う。
ヴァイオリン作りは、物作りが好きな人間の地味な仕事である。




ストラディヴァリ製作の楽器ケース

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42  黄金比は何処

 ヴァイオリンの製図法に関して色々な意見があり、クレモナではサッコーニの『ストラディヴァリの秘密』と言う名著に出ている方法や、それに類似する方法が信じられている。
 しかし、私としては、サッコーニの考え方からは、ストラディヴァリの秘密は出て来ないように思える。
拙著"ヴァイオリンのF孔"の中に書いた正十角形から求める方法が、正しいかどうかは、読者の判断に委ねる所であるが、やはり、ルネサンス以前の建築、絵画、彫刻等全て職人(芸術家と言う表現は避けたい?)が関与している物は、黄金比が何処かに生かされていたと思うのである。
 過去において黄金比は、あまりにもありふれた周知の技法だったからこそ、その後の斬新と言う物に押しやられたのかもしれない。



サッコーニの製図法
楽器の全長の高さと底辺を持つ二等辺三角形を上下に書いて
この交点より、内枠の各々の長さを求める




A.C.L.A.P. (クレモナ弦楽器プロ職人組合の印)




第九回トリエンナーレの規約パンフレット





最近のクレモナヴァイオリン製作学校のマーク
なんでもかんでも、ストラディヴァリと言う名前を入れれば良いと思っているのか?!

国立クレモナ国際ヴァイオリン製作学校などの名称で訳されているが
学校名I.P.I.A.L.Lを直訳すると「弦楽器及び木工職人のための国際高等専門学校」
90年代の終りに学校改革により、やっと高等学校として認可された






本の表紙




 この製図法の図は、サッコーニの盲目的信奉者によって色々な本や、パンフレットの表紙に使用されているが、残念ながらストラディヴァリの考え方を、まったく理解できていない
(サッコーニは、確かに多くのストラディヴァリを修理した優秀な職人であり、著書ストラディヴァリの秘密は情報として素晴らしいが、真のストラディヴァリの秘密は作図の段階から発見できていなかった)



 ヴァイオリンと内接する正十角形について簡単な説明をしたプレゼンテーション用のスクリーンセーバー(8.3Mバイト、約3分)を作りました。
ダウンロードして、ダブルクリックで実行させるか、スクリーンセーバーに設定して見てください。
(実行には、Visual Basic 6 ランタイムが必要ですので、作動しない時は、Visual Basic 6 ランタイムをインストールして下さい)


スクリーンセーバーをダウンロードする(解像度800ื600)



自己解凍ファイルにしたVisual Basic 6 ランタイムをダウンロードする





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43  ARTIST(芸術家)とARTIGIANO(職人)

 ARTIST(芸術家)とARTIGIANO(職人-ARTISAN-英)と言う言葉は、共に、ARS(技能、技術)というラテン語より生まれている。過去において、芸術家も職人も、手で物を作ると言う意味で同族であったと思う。
現代は、使用目的のある物を作るのが職人で、それ自体に存在価値がある物を作るのが芸術家であると思う。
また、芸術家は気が乗らなければ創作活動をしないが、職人は、毎日毎日、同じ作業を続けるのである。芸術家はインスピレーションで活動するが、職人は仕事が習慣になって働くのである。
 しかし、職人が、気が乗らないと言う言葉を超えて、毎日同じような仕事をするからと言って、そこに創造性がないわけではない。
1つの枠の中でも、手作業はいつもARSなのである。





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44  ハンドメイドは柔軟

 最近、「手作り」言う言葉が受けている為か、いたる所で使われている。
しかし、「手作り」とは、どのような事か、多くの人に質問しても、「機械を使っていない」と言う程度の答えしか返ってこない。
 私は、弓を製作していた頃、フロッグの下に付く、貝で作った薄板が入るスライド部の溝を僅かにハの字に切っていた。 量産品の弓や、ハンドメイドと言ってもフロッグを自作していない弓は、この溝が、ほとんど平行になっている。
 ハの字に切る事によって、毛替えの時に、よごれ等で固着しやすいスライド部を、無理な力を加えなくても簡単にはずせるようにできる。
この溝を普通のフライス盤のような機械で、平行に彫るのは、簡単であるが、ハの字に傾斜を付けて彫るのは、非常に手間がかかる。
しかし、手で彫るのは、平行も、ハの字も大差ないのである。




貝のスライド部が平行に入る半完成品







貝のスライド部の溝を僅かに先広がりで切ったフロッグ(著者作)
bの幅が僅かにaより広くなる







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45  老マエストロの楽器は、精度を超える

 クレモナの一部の著名な工房からは、ほとんど引退した老マエストロのラベルを貼った楽器が年に20本以上も日本に送られている。
これらの楽器はクレモナに住む十数人の東洋人によって工房の外で作り上げられている。このような工房の在り方は、アマティの時代からの自然な形であると、工房の人は主張する。
 しかし、私は、ストラディヴァリの年老いてからの楽器を見た時に、工作精度の粗さの中に、精度と言う言葉では表わせない、熟練した老マエストロ本人の、精度を超えた力を感じる。
 現代の著名な老マエストロの楽器は、良く品質管理されているためか、10年前の楽器と少しも変わらないどころか、精度だけは良くなっている。




ストラディヴァリ、88歳頃の楽器




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46  弓は弓修理人へ

 私の尊敬する先輩の製作者の一人にC.Aさんという人がいる。彼は、クレモナの製作学校を卒業して、故郷の広島に帰り工房を開いたが、弓の毛替えは、「出来ない」と言って断っていた。彼の知人たちは、「日本では、毛替えは、最初の仕事だよ」と言っていたが、、、。
私は、彼が本当に毛替えの仕事の難しさを知っていたような気がする。
 日本には、専門の弓修理人が少なく、殆ど、楽器の修理人や製作者が、毛替えや修理を請け負う。私は、幸か不幸か、かなりの弓を製作した事で、弓は楽器の付属品でもなく、弓作りと楽器製作の仕事が同一線上にもない事を感じた。また彼らが、弓の深さを知らなすぎるようにも思える。
 例えば、弓の雄ネジの交換に関して、『ワンピースか、スリーピースか、銀製か、洋銀製かのようなデザイン上の事や、またネジのピッチが合っているかとかが大切である』と言う、ある製作者の意見を聞いた事がある。デザイン上の事を合わせると言うのは、修理以前の問題であり、ネジのピッチが合っていなければ、1、2周、回しただけでブロックされる。このネジを力任せに、回す修理人や、演奏家はいないだろう。
 弓の雄ネジの交換に関して最も大切な事は、張られた毛の力を正しく弓の木口に分散して受けさせているかどうかである。
それは、ネジ棒の長さと穴の深さ、及びドーナツ状のエッジの高さと臼状の堀の深さの関係が正しいかである。




ドーナツ状のエッジ(凸 とつ)




臼状の堀(凹 おう)とネジ棒






ネジ棒の穴が深か過ぎ、ドーナツ状のエッジの高さが低い時
全ての張力が木口にかかるために、木口の磨耗や割れが起きやすい




新作や弓の雄ネジを変えた時は、僅かに木口の所に隙間がある程度にする
少し使用しているうちに張力が三点にかかり、弓を傷めない


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47  すべては正十角形より

 ある著名な弦楽器関連の本に、駒の位置や、弦長に関して『駒の位置が基準となってf孔の位置が決まっているのです。
すなわち、駒の位置というのは楽器の設計上の最も重要な、そして最も基準となる位置なのです。 楽器を設計する上で一番重要なことは、「胴体の大きさ」ではありません。それよりも重要なのは「弦長」なのです。』とある。クレモナの殆どすべての製作者も、このように考えている。(全世界と言った方が正しいかもしれない)
 しかし、私の、『胴体の長さに内接する正十角形より、すべての長さを、素晴らしい調和の中で求めていく』と言う独断的な方法は、受け入れられるまでに少し時間がかかるかも知れないが、いつかは製作者の常識になると思っている。
その時には、楽器を設計するにあたってf孔のキリカキの位置や弦長から、規格化すると言う考え方が、いかに弦楽器の調和の素晴らしさを理解する上での障害になって来たかが解ってもらえると思っている。







 -注- この図は、『38 はじめから小さいボタン』で記述したように、なぜデザインの段階で今より、小さいボタンであった事を明白に表している。



『孔の下部ひとみ径に隠された黄金比』

ヴァイオリンのf孔の下部ひとみ径(円孔の直径)と黄金分割の関係および、『38 はじめから小さいボタン』を説明をしたプレゼンテーション ビデオ
“The_hidden_golden_section_in_the_lower_eye(The_Violin_and_the_Decagon)”を作りました。(21.3Mバイト、7分40秒、swf アドオン)

下の画像をクリックして下さい




画質は落ちますが、上のビデオクリップを高圧縮したAVIファイルを作りました。


 AVI(11.8Mバイト)ファイルでダウンロードしたい方は、ここをクリックして下さい   Windows Media Player で再生できます。(Xvid MPEG-4 Video Codec)

  尚、個人的な考えにより、的確であるかどうかは少し疑問が残りますが、『f孔の円孔の直径』を『瞳径(ひとみ径)』と言う言葉で、表現させていただきました。


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48  キリカキよ、さようなら

 若い製作者に、「ヴァイオリンを製作する時、F孔の内側のキリカキの位置を上から195㎜に取る事が非常に大切ではないのですか?」と訊かれた。
この考え方は、ストラディヴァリやグァルネリの死後、一つの作図の方法が忘れ去られた時から、300年もの間、正しい基準値になっている。
 (英語ではBody Stopと言い、ドイツ語では、メンズアと言うそうであるが)
世界中の総ての製作者や商人も、全長に関係なく、すぐにこの長さを測り、2㎜長いとか、短いとか論じる。
 しかし、このキリカキの位置は、駒の位置(弦長)を示す為、とても重要視されているが、『下の円孔の位置が基本となり、上の円孔が求められ、この二円によってキリカキの位置が求められている』だけなのである。
 では、なぜ下の円孔の位置が基本なのか、それは下の円孔を、とても合理的に求めているからである。即ち、上部からの長さを、全長に対して黄金比で取ってある。(0.618)
これは楽器の全長に内接する正十角形の一辺(中央C部の最小幅)の2倍の長さである。
左右の円孔の間隔は、中央C部の最小幅と同じく正十角形の一辺の長さであり、これは半径に対して黄金比である。
上の円孔の上部からの位置は、上部の最大幅の長さ(近似値で)である。
上の円孔の左右の間隔は中央C部の最小幅の半分を黄金比で分ける位置である。
 これほど素晴らしく、緻密なF孔の位置を、何でもかんでも、全長に関係なく、「キリカキは195㎜に取る」と言う考え方で片付けてしまうのは、少し寂しい気がする。


--注--

 この考え方は、私見であり、300年以上忘れ去られてきた事である。
このために、キリカキを至上とする現代の製作者にとって異議があるかも知れないが、地動説のように、いつかは、この素晴らしい製図法が製作者の常識になると思っている。

(詳しくは、拙著"ヴァイオリンのf孔"P20-45を参照して下さい)




a:bは、黄金比  bはcの二倍
bは、直径(a)に対して黄金比であり、正十角形の一辺でもある中央C部の最小幅(c)の二倍である




近似値で二つの正五角形の対角線である破線p、qを二等分する線上に、
下の円孔の位置がある
(上部から下の円孔までの長さbは、内接正十角形の一辺の長さの2倍である事に注目)
(破線pは、下部コーナー間の長さであり、中央C部の最小幅に対しての黄金比)
下部コーナー間の長さは、「54 どこから来るかを、知る」を参考にしてください



--追記--   

  では、キリカキは、どこに?

 キリカキの位置は、下の円孔と上の円孔の位置との中間点であると考えると、ではキリカキの上端からの位置はどのように求めたらよいかと言う疑問が湧くであろう。
下の円孔の上端からの位置は、中央C部の最小幅の2倍であり、これは全長に対して黄金比であり、全長の0.618となる。
上の円孔の上端からの位置は、上部の最大幅と同じであり、全長の0.475となる。
すなわち全長を356㎜とすると

356ื(0.618+0.475)๗2+1=195.5

  もっとわかり易く書くと
356ื0.618=220        下の円孔の上端からの位置
356ื0.475=169        上の円孔の上端からの位置
(220+169)๗2=194.5    下の円孔と上の円孔の中間点
194.5+1=195.5        内側のキリカキは中間点より約1下がる

 上の式を見たならば、全長に関係なくキリカキ(駒の位置)は、ヴァイオリン製作上の重要なスッペックとして、上端から絶対的に195㎜であるとか、弦長や駒の位置が基準となってf孔の位置が決まっていると思う人はいないであろう。
ヴァイオリンのすべての長さや位置も三つの比、全長に対して内接する正五角形の一辺0.587(下部最大幅)、内接する正十角形の一辺0.309(中央C部の最小幅)、内接する小円0.475(上部の最大幅)ですべて求められる。


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49  内枠が先か、外形が先か

 考え方の方向を間違えると、いつまで経っても正しいものが見えてこない事がある。
一般にヴァイオリンの形も、基本に内枠のデザインがあって、それによって外形が決まると考えられているが、この方向からは、正しい作図法は見えてこない。
最初に、一つの作図法で完全にヴァイオリンの形がデザインされ、この外形から、フチの部分の約2.5㎜と、胴板の厚さ1.2㎜を取り除いて内枠が作られているだけなのである。
たかだか周囲で7㎜強の違いであるが、本体が354㎜程度の長さなので、どんなに内枠を、ある製図法で作図してもフチの部分が大きな誤差となり、正しい形にならない。
 内枠を基本に考えて、ヴァイオリンの作図法を説明している本は、すべて方向が逆なのである。
(サッコーニ著の“ストラディヴァリの秘密”中の作図法、及び現代クレモナの作図法は、内枠がヴァイオリンの形の出発点と考えて、内枠を製図する)


-注-  セロや一部のヴィオラは、本体に対してフチの占める割合が小さいので、内枠を基本に外形がデザインされる。 



ストラディヴァリの内枠
この内枠が、出発点として、ある一つの製図法で作られているのではなく
デザインされたヴァイオリンの外形を基に作られている



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50  ストラディヴァリの怒りに触れるのか

 もしも、拙著"ヴァイオリンのF孔"に書いた作図法が正しいとすると、「なぜストラディヴァリ以降の製作者が、だれ一人として、この作図法を受け継ぐ事ができなかったのであろうか」と言う疑問がわく。

 紀元前にピラミッドやミイラの製作に携わったユダヤ人の指導下でアンドレア アマティは、16世紀、正十角形を基にヴァイオリンを、非常に素晴らしい形にして行った。
この作図法は秘密ではあったが、彼は息子だけには伝えた。
アンドレアの孫で、開放的な考え方を持つ親方のニコラ アマティに近づいたストラディヴァリは、ケース作りや、彫刻の徒弟をやった事があり、多才(雑学と言う方が正しいかもしれない)であっただけに、その秘密の作図法を奪い明かす事ができた。しかし、ストラディヴァリは、息子たちに楽器製作を手伝わせたにもかかわらず、陰険だったのか、息子たちの独立を嫌ったのか、また他の製作者の台頭を恐れたのか、それを伝えようとしなかった。
 このような中で、続く多くの製作者たちは、名匠の形を上手くコピーする事が至上の物となってしまった。
これが、美的にも、製作技術的にも、まったく進歩しなかった(後退したのかもしれない)一つの理由であると、私は思っているのだが、、、

私の作図法が正しいとすると、ストラディヴァリの怒りに触れるのかもしれない。





ストラディヴァリの石像





 これは私のロマンであるが、、

 ストラディヴァリも、この正十角形を基にした作図法を40歳の頃(1690年頃)から、ある程度は知っていたが、完全に知ったのは50歳を過ぎてからである。
アンドレア グァルネリはニコラ アマティの最上の愛弟子であり、この作図法を伝授されたただ一人の製作者であった。
 1698年 アンドレア グァルネリ 75歳の臨終の床で50歳に手の届こうとしているストラディヴァリは、息子たちにあまり慕われなかった為に寂しく息を引き取ろうとしているこの老匠に侍う事で、この秘密を巧妙に聞き出すのではないだろうか。何故ならば、ストラディヴァリの楽器は、1700年以降、完全にこの作図法が生きてくる。
この作図法の習得が、平均寿命が65歳にも届かなかった時代に、50歳を過ぎてから黄金期を迎えるストラディヴァリの秘密かも知れない。





 弦楽器製作の世界は、非常に特殊であると思う。
ストラディヴァリの死後、ヴァイオリンの形は既に完成度が100%であると言う美辞のもとに、楽器の全長や横幅、f孔の位置など、どのように求められているか考えられる事なく、300年以上も、コピーする事が最上とされて来た。
そして、コピーする事は、中心線至上主義のように、製作の発想を180度変えてしまった。

 クレモナの150人近くいるプロの製作者に、横幅はどのようにして求められているのか訊いても、誰一人として正しく答えられない。
どんな職人の世界でも、自分で製作している物の寸法がどの様にして求められているか解からない事などありえない。
指導者的立場にあるグランデ マエストロたちは、そんな事どうでもいいから、17世紀の巨匠のコピーをすればいいんだと言う。
ヴァイオリンは、製作者から思考(試行)と言う一番大切な物を取り上げてしまった。
いや、ストラディヴァリが取り上げてしまったのかもしれない。

 17世紀の作図法や製作理念が解かったからと言って急に良い楽器が出来るようになる訳ではないが、絶対に作られた物に差異が出る。
数年後には、ヴァイオリンの下部最大幅は正五角形の一辺、中央C部最小幅は正十角形の一辺と、当たり前の様に、総ての製作者が言うようになるであろう。
そして其の時に初めて、ストラディヴァリの束縛から解放されるのかもしれない。




―補―
 クレモナの150人近くいる製作者、いや全世界の製作者(ストラディヴァリ以降の総ての製作者と言う方が正しいかもしれない)が横幅の寸法が、どの様に求められているか正しく理解していないと公言するとの、サッコーニの名著“ストラディヴァリの秘密”やTULLIO PIGOLI教授の"La tracciatura degli strumenti ad arco"や、クレモナの製作学校の校長であるスコラ―リの本"ヴァイオリンの誕生"に求め方が出ているではないかと言う反論が出ると思う。
 では、これらのどの本も多少の違いがあるが、根本的には発想はみな同じなので"ヴァイオリンの誕生"に書いてある下部最大幅の求め方を簡単に紹介してみたい。

彼らは総て始めに内枠をデザインしたと考えるので、表板の長さから上下のフチの長さ分5㎜引いた長さを基準とする。

では、この基準となる長さABを1として考えてみる。

中央C部の長さは全長の1/4で取り、この長さを8等分して中心点Oより、5つ分の長さを点Oの上部、3つ分の長さを点Oの下部に取り点Cとする。

  点Cから下の点Bまでの長さBCは、1/2-(1/4ื3/8)≒0.406である


この点Cの位置が下のコーナーの位置で、この線分BCの長さの12分の17を下部最大幅とする。
  即ち、下部最大幅DEは、0.406ื17/12≒0.575 となる



  BC:DE=12:17


単に、結果に数値を合わせて行っただけである。



 ストラディヴァリは、下部最大幅を表板からフチを引く事なく、正五角形の一辺、即ち、0.587で求めている。




完成度の高い物ほど、シンプルなのである。







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続ヴァイオリン作りの独り言(51~60)







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 私のホームページの愛読者の方から、「たとえ比較や批判の為の短い引用文や、小さな画像でも版権が存在するのであるから、出典を明記すべきではないか」と言う助言を頂きました。

【47  すべては正十角形より】での
"『駒の位置が基準となってf孔の位置が決まっているのです。すなわち、駒の位置というのは楽器の設計上の最も重要な、そして最も基準となる位置なのです。 楽器を設計する上で一番重要なことは、「胴体の大きさ」ではありません。それよりも重要なのは「弦長」なのです。』"
 は、佐々木ヴァイオリン製作工房様のホームページより引用させて頂きました。

有難うございました。







本(ヴァイオリンのF孔)の紹介

著者の弦楽器関係拙作フリーウェアプログラム+アルファ

ヴァイオリンを選ぶ時



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