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 何故、柾目に取った板が反らないか?

 先の『何故、板目に取った板が木表側に反るか?』を読んで理解して頂いた人には蛇足かもしれませんが、柾目に取った板の反りについて書いておきます。

 板目に取った板の時と同様に、収縮前の木の半径方向(r)、円周方向(t)での収縮率の比を1:2とし、半径10、円周10の扇形の木片で考えてみます。
この木片を円周÷半径の関係で角度を示すラジアンと言う単位で表すと、1ラジアン(10/10)で約57.3°(57度17分)となります。
厚さが外周で 2 の柾目の板をこの図の中に取ります。( 2/10ラジアンであり、板厚 2 ではありません)
この板の両端と中心部にa、b、c、の三点を取り、厚さ(x、y座標)を求めてみます。





点 c のx、y座標は
  x = cos(1/10ラジアン)×10=9.95       (1/10ラジアン)は、5.73°
  y = sin(1/10ラジアン)×10=0.99


点 a のx、y座標は
  x =0.99 ÷tan(5/10ラジアン)=1.81      (5/10ラジアン)は、28.65°
  y =0.99


点 b のx、y座標は
  y =(9.95+1.81)÷2=5.88
  x =0.99





 まず、半径方向の収縮を1として考えてみます。
総ての半径が1減るのであるから形(57.3°)は変わらないまま、半径9、円周9の相似の扇形となります。
即ち、半径方向の収縮は、円周方向の等しい収縮を伴う事になります。





半径方向に収縮後(緑)の

点 c' のx、y座標は
  x = cos(0.9/9ラジアン)×9=8.95
  y = sin(0.9/9ラジアン)×9=0.898


点 a' のx、y座標は
  x =0.898 ÷tan(4.5/9ラジアン)=1.64
  y =0.898


点 b' のx、y座標は
  x =(8.95+1.64)÷2=5.29
  y =0.898





 次に、半径方向に収縮した後の扇形を使って、円周方向の収縮を考えてみます。
半径方向、円周方向の収縮率の比が1:2で、半径方向の収縮を1としたのであるから、円周方向の収縮は2で、半径方向の収縮後の値である円周9から1を引いた、半径9、円周8の扇形となります(赤)。
即ち、8/9ラジアンで約51°の扇形となります。 (8/9÷0.01745=50.939)




円周方向に収縮後(赤)の

点 c'' のx、y座標は
  x = cos(0.8/9ラジアン)×9=8.96
  y = sin(0.8/9ラジアン)×9=0.79


点 a'' のx、y座標は
 まず、O からa'までの距離を求めると
 O a' = =1.87

  x =cos (4/9ラジアン)×1.87=1.68       (4/9ラジアン)は、25.5°
  y =sin (4/9ラジアン)×1.87=0.80


点 b'' のx、y座標は
  x =(8.96+1.68)÷2=5.32
  y =(0.80+0.79)÷2=0.795



点 a''、b''、c''のy座標の値は、0.80、0.795、0.79となります。


この事より、点 c''は、点 a''より、僅か0.01ほど板厚の収縮が大きく、少し傾斜(樹皮側でより薄くなる)しますが、三点は、一直線上にきます。

これが、柾目に取った板が反らない理由です。
(勿論、伏せて保存した様な二面の乾燥の条件が異なれば柾目も反ります)



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