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ヴァイオリンの内枠、外枠についての私見



ストラディヴァリの内枠に見る絡繰 Ⅰの少し詳細な解説です。 



 ストラディヴァリの内枠に見る絡繰 Ⅰで

 世界の4大製作者コンクール(アメリカヴァイオリン協会主催のコンクール、パリのコンクール、ドイツミッテンバルドのコンクール、そしてクレモナのコンクール)の優勝者の楽器を見ても、この切り換え点を意識して製作しているとは思えない楽器が沢山あります。即ち、曲線がだらだらしていて何処に切り換え点があるかはっきりしない楽器や、左右で切り換え点の位置が違う楽器と言う事です。

 ドイツ式内枠や、フランス式外枠は、主に三角形のコーナーブロック材を附けますが、ストラディヴァリの内枠は、四角のコーナーブロック材を附けて使います。この四角のコーナーブロック材が素晴らしい意味を持ちます。即ち、この四角のコーナーブロック材の位置が、意識した切り換え点を作るのです。コーナーブロック材の長さが、楽器のデザインの重要な要素となります。(三角形のコーナーブロック材では、長さを意識する事が困難である)

三角形のコーナーブロック材を附けた外枠



 コーナーブロックは、単なる構造的補強材ではなく、外形のラインを作り出す土台なのです。
ストラディヴァリの楽器は、外形を見ると、コーナーブロック材の位置や大きさまで見えるのです。

ストラディヴァリの内枠P1705
コーナーブロック材の位置からカーブが入れ替わる
そして、この切り換え点の位置がパフリングや外形のカーブに反映するが、外枠ではこの意図が明白に出せない!

 基準線Lの位置は非常に重要な意味を持つ、即ち、この線は単なる左右のコーナーブロックの長さを示す線と捉えるのではなく、黄金比による作図法より求められた切り換え点を示す線であり、この線に合わせてコーナーブロックの長さが取られていると考えるべきである。


 と書きましたが


基準線Lの位置は非常に重要な意味を持つ

と言う事の素晴らしさを少し説明いたします。



但し、この説明を読む前に拙作“5分割による横幅の求め方”のプレゼンテーション ビデオを先にご覧ください。
(画像をクリック)

“5分割による横幅の求め方”




上のビデオをご覧頂き内接正十角形と黄金分割に関してお解りになったと思われますので話を進めます。





最上点から上部コーナーブロックまでの高さは、
胴長を1と仮定すると

(1-0.309)÷2=0.3455 となります。(0.309は内接正十角形の1辺であるから)

そして、素晴らしいことに、この0.3455は上部左右に黄金分割の矩形を作ります。



なぜならば、短辺は0.213で、1:1.618の黄金比になるからです。


詳細は、“ヴァイオリンと黄金分割”のサンプルPDFをご覧ください。





次に、上のコーナーブロックの高さを求めて見ます。
このコーナーブロックの高さも胴長に内接する正十角形の1辺(黄金比)のみで求められます。

ストラディヴァリの内枠PG 1689年

上部コーナーブロックの高さ、即ち内枠に示された平行線の幅を求めることです。








上部コーナーブロックの長さを求めるにあったて、まず頭部の幅を考えます。

頭部の幅は、全長×0.309×(1-0.309×2)
即ち、 全長×0.309×0.382








上部コーナーブロックの長さは頭部の上部最大幅の2倍で取ります。








全長を355mmとすると
上部コーナーブロックの長さは、全長×0.309×0.382×0.309×2で、25.9mm

全長を1をすると0.309×0.382×0.309×2で、約0.073です。








内枠に示された基準線Lの位置、即ち切り換え点を示す線は、単純な黄金比より求めらる。

即ち、上部コーナーブロックで作られる上部カーブの切り替え点は
内接正十角形の一辺(0.309)のみで表せる。

(1-0.309)÷2-0.309×(1-0.309×2)×0.309×2

=(1-0.309)÷2-0.309×0.382×0.309×2
=0.3455-0.073
=0.2725

よって、全長を355mmとすると、上部から355mm×0.2725≒96.7mmの所にカーブの切り替え点がくる。

また、この線は作図より点Pとして求められる。



ストラディヴァリの全長355mm用の内枠では、基準線Lの位置は縁と横板の厚さを引くので、上部から約93mmなる。









上部コーナーブロックの秘密は、それだけではない!!


カーブの中心、即ち、上部最小幅となる位置は上部から内接正十角形の一辺(0.309)である

0.3455-0.073÷2
=0.3455-0.0365
=0.309  !!!






半径に黄金比である内接正十角形の一辺(0.309)の活用の図


また、上部コーナーブロックの下カーブの中心も横からの内接正十角形の一辺(0.309)である
即ち、上部コーナーブロックの下カーブの左右の中心が作る間隔も、0.382である

勿論、縦にも0.382が見られる









ー結びー

 私は、クレモナのモラッシー派が使う外枠による製作を否定している訳ではありません。
これは、クレモナの伝統から完全に外れていますが、一つの製作法として、ある意味を持っていると思っています。

また、ビソロッティ派は内枠を使いますが、シモーネ・サッコーニ(Simone SACCONI)の作図の考え方を妄信している為に、まったくクレモナの伝統を見失っています。

この様に述べると、現代の製作者や楽器商から反発の声が聞こえてきそうですが、この非継承は、彼らの責任ではなく、300年前のクレモナの巨匠たちが、弟子の独立や、後続する製作者の対抗を恐れて真の作図法を伝えなっかた事に起因するのではないかと思っています。

 ストラディヴァリの内枠には、基準線Lの位置の様に300年以上も忘れられた素晴らしい製作理念が隠されており、この理念を実現するには、外枠では困難であると言うことです。




まだまだ、ストラディヴァリの内枠には、現代の製作者が想像できない沢山の秘密があります。
下部コーナーブロックの秘密!は、次の機会に、、。


もしも、アインシュタインが生きていれば、私の考えた内接正十角形からの作図法のよき理解者になってもらえたかもしれない、、、。



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